小林勇一
沖縄への旅(自転車)の記録
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新装なる首里城
新装なる首里城の柱の朱
風は海より吹いてくる
真夏の日、その空の青、海の碧
強烈なハイビスカスの赤
鳳凰木の並木に映える
首里王朝の栄光の日が蘇る
興亡の各地の城も常に海を望む
その流線型の城壁より望めば
リ−フに白波はたちて海鳥が飛ぶ
蝶がその城壁を越えて舞い入る
城内の御嶽(ウタキ)も影なし古りて
ここにノロ(神女)の集い祈りぬ
琉球は海の神の守る島
海の恵みに海の幸に栄える島
龍潭池にはオオゴマダラが舞い
ふうわりふわりふうわりふわり
南の国にゆるやかな時の流れ
古りたるガジュマルの木陰に
老人は休み昔を語りぬ
玉陵に拜して祈るはその末裔か
珊瑚の石畳の古道を歩み下り
昔日の面影がここに残りぬ
紅芋の味はここに根づく豊かさの味
オキナワの食は長寿の健康食
厳しい暑さの中の滋養の食
歴史に作られた独特の味
沖縄は一つの別個に作られた文化圏
しかし沖縄はその後大国に引き裂かれたり
その傷痕は深く刻まれて癒されず
首里城の栄光の日は還らない
やはりここに琉球王朝の独立を夢見るや
その朱の柱に寄ればその日が蘇る
琉球王朝栄光の日
榕樹(がじゅまる)の古りて根づきぬ
城の石垣の曲線美しき
琉球国に競い建ちたる
城こそ良きかなその城の
みな船を待ち海を望むや
遙かなる唐の国の船の来たらむ
諸人の迎いて幸運ぶ船
真夏の日、その空の青、海の碧
朝リ−フに寄する波の白き清らさ
その緑鮮やかに平和の鳩よ
蝶は次々に舞い入り遊びぬ
サトウキビ畑に汗流し働く人よ
代々の亀甲墓は身近にありぬ
珊瑚の石畳の古道に仏桑花の赤しも
沖縄の栄いの日も遠きかな
その巧みと芸とは伝い残されぬ
ああ その海に栄いし琉球王朝の日よ
ルソンにシャムにジャワにマラッカに
商人は島々を伝いて波濤を越えてわたりしを
海の色美しく変わらじ夕陽の没りぬ
大和人に憧れの檳榔(あじまさ)の島こそ良けれ
魅惑の貝を土産に我は大和に帰りぬ
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