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ヨ−ロッパの詩小林勇一

レバノン杉
ドルフィの神殿
夏の地中海
ギリシャの地形
エギナの島
ラインの岸辺
ベネチアは海に沈みぬ
イルカのコイン

地中海−文明の交わりの海2003−10月(別ペ−ジへ)
石の文明(石の詩)

 レバノン杉

レバノン杉の森よ、荘重なる森よ、
その緑の深く青々として神さびぬ
地中海の船の材はレバノン杉に求められぬ
その木は真直に帆柱によしと
その木は香はくにて宮殿は香りに満たされぬ
その杉の切られて禿山となるも悲しも
たとえ砂漠の熱風のそこに吹くとも
レバノンの森は青々として涼しく
その杉にこそ栄のありしも志操の育む
今はなし形見と残る数本のみなりき
何故に失われしや人のあくなき欲望の
この杉を切り取りて砂漠に残すは
栄華の跡の都、ただ砂に埋もるや
王の野心に戦いに浪費されしや 
王の宮殿にと建てし柱はなしも
バビロンも滅び、ソロモンの栄華もなし
エズラ王国は一夜に炎上してなしと
エズラ王国の栄の宮殿も今は淋し
禿山を背景にして石柱の影をなすのみ
神聖な森の神を乱せしものは誰か 
戦乱と開発と王の栄光を求めし者ども
記されるべきは王の名にあらじ
その回りはみな砂漠と化して潰えぬ
惜しきは都にあらじレバノンの杉なりき
千歳を生きるレバノンの杉こそ惜しけれ
旅人はただ砂漠の熱風を受けてあわれ
地中海に夕陽の映えてレバノンの暮れゆく






ドルフィの神殿

清涼な白雪の峯々重なりあいて
急峻な高みから清水流れ落ちてひびく
この山高くドルフィの神殿は古りぬ
その競技場の石のスタジオに座り古思ふ
ここに集い競いしギリシャの兵よ
その勝利の冠を抱き故郷に帰りしものよ
その誉れは長く石に刻まれぬ
神々の雲の上に集いあれまして
オリンポスの山頂にゼウスの声
ああ 神託はここに厳かに告げられぬ
今は一面菜の花に埋もれてもの寂びにけり
ただ石柱のみ威厳を保ちて古りぬ
ここがかつての世界の中心なりと・・・
アレキサンダーの遠征よ、その雄図よ
ギリシャの文明はインドの仏像を作り
ペガサスはるか中国まで飛び
王陵の参道に石となり並びぬ
ギリシャの栄光は歴史の礎となりしを




 

夏の地中海


地中海は大洋のように広すぎることなく
点々と島があり交易の航海に適している
地中海はアジアとヨ−ロッパを結ぶ海
航海術はそこに育まれ文化の交流した海
フェニキア人が交易のためアルファベットを広め
古代より風を受けて帆船は行き来せり
熱砂の砂漠よりい出てイスラエルの港に
十字軍の要塞古りて残りかなたアテネへローマへ
地中海の風のそよぎて涼しき船はいで行く
地中海は大陸と島とを結ぶ海
ロードス島にノルマンのゴッシクの教会の跡
シチリアにもノルマンの教会に文化の跡
地中海の島には文化が歴史の層のように交差する
古くはギリシャの植民都市、ナポリにニース
そこにギリシャの神話のコインは残されぬ
地中海を通じてエジプト文明とも交わる
アレキサンドリアには世界の本を集めた図書館
知識はここに集まり世界最古の灯台は地中海を照らし
アレキサンドリアの遺跡は海より発見されぬ
ローマの跡は地中海の沿岸各地に今も残る
エフェソスの遺跡、カルタゴの滅亡、コンスタチンの遺跡
偉大なる凱旋のローマの門は城壁は今も残る
夏の日よ、イスタンブールのビザンチンの長い城壁よ
ローマは今もその足跡を明確に各地に残しぬ
栄光の残照がその古りたる遺跡に映える
地中海は大洋のように広すぎることなく
ここは後のコロンブスの活躍する内海
この海よりいでて新大陸は発見されぬ



ナポリとかニースはネオ・ポリスで新しい都市のことであった。

イスタンブールの城壁


  
 ギリシャの地形

ギリシャの山々は気高く雪を帯びて
霊気漂いゼウス神など神々の棲む
アテネの神殿は海に望み地中海に開く
地中海から風はそよぎ泡からアプロディティが生まれる
帆船は風にのり島々を伝い神々も運ぶ
時に風は思わぬ遠くの島に運び
英雄の伝説が憧れとともに語り継がれる
山岳地帯のペロポネス半島にはアルカデア
尚武の国のスパルタの名をはせぬ
華美な文化の育たず質朴素朴の山国
山頂に山羊を追い山中に埋もれたり
ギリシャの島々は地中海を結び交易の基地となり
山を望みて独立の気運起こり
海を望みて外に眼を開き自由の気運起こり
ギリシャに大帝国、統一国できず
ポリスの自主性育み民主政治の起こる
その変化に富みし地形は多様なる思想を育み
あまたの天才のここに生まれ競いあいぬ
エジプトに砂漠を貫くナイル川ありて
一人の王を頂き一大統一国の安定して持続す
しかし外に発展せず砂漠にピラミッドは埋もれぬ
ギリシャの地形は個々に多様に分化して
それぞれの個性を育みローマに受け継がれて
後の西洋文明の礎となり今日に生きる






 エギナの島

もの寂びて松の緑の木蔭よ
イギナの島の歴史も古きや
アフェア神殿に祭る女神を
慕いてや春の花々咲きぬ
クレタの島より横暴を逃れしも
また漁師にとらわれ森に消えしも
アフェアとは見えざるものと
その名の良しもその美しき姿
穢れしものより森に隠して
ここにその女神の安らふべし
春の花々その神殿にそい咲き
海よりの微風はここにそよぎぬ
女神は静かに微笑みここにあれ
岩肌の海岸ロッキーローズ咲きて
島を巡りてヨットは去り行く
その昔エギナの商人スペインに行き
銀を持ちかえり産をなす
ギリシャ最古の亀の貨幣もここの産
島に実るはビスタチオの実
羊にロバに果実の島
古きギリシャ正教の教会
その歴史も古りてもの寂びぬ
遠く来たれる異国の旅人よ
しばしギリシャの昔偲ぶかな
その島古く岩も古く土さえ古く
もの寂びて松の緑の眼にしみて
アフェア神殿厳かに鎮まり
島を巡りて白い帆のヨットや
ゆるやかな時の流れに去りぬ



エギナ

ギリシヤ神話によると、工ギナの最古の祖先はアイア
コスという伝説的人物でありました。アノアコスには子供がな
かったので神々の神ゼウスはニンフのエギナに産ませた子を与えました

アフェア

エギナ島の北東部アギア・マリナ港の近くに、松の緑に被わ
れた小高い丘陵があります.四方に広がる青い海を見晴らすそ
の頂に、エギナ土着の女神アフェアを祭った神殿があります。
女神アフェアは知恵の女神アテナの地方的な呼び名とされてい
ます。クレテの王であったミノスが恋をした、一人の美しい
ニンフがありました。自由の身でありたいと願ったこのニンフは
ミノス王の手から逃れ工一ゲ海に身を投じました。しかしエギナ
から来た漁師たちの漁網に掛り、助けられてエギナにやって来
ました。ところがここでも又、漁師の恋から逃れなけれはなり
ませんでした伺深い森の奥に駆け込むと、彼女の姿は消えて見
えなくなってしまいました。この時からこのニンフのことを、
アフェアと呼ぶようになったと言います。(ギリシャ語でアフェア
アとは「見えないこと」を意昧する)エギナの人々は、毎年この
アフエアを土着の女神として祭るようになりました・

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ギリシャ の箱



  
ラインの岸辺

秋風さやかに広々とラインは流れぬ
もの寂びた聖堂に秋の日さして
ここに長き祈りの歳月は刻まれぬ
市場にリンゴに菊の花売られをり
グーテンベルグのマインツの街落葉して
石畳の道我が踏み歩みぬ
聖書はドイツ語に訳され庶民の手に
粛然とポプラは対岸の岸辺に
秋風さやかに広々とラインは流れぬ
山の上に点々と古城は古を語り
もの静か流るるラインを見下ろしぬ
晩秋厳かに教会の鐘鳴りにき
貨物船の川を下るやラインは
かなたケルンの街にも通じぬ
そこにまたケルンの双塔高く天を突き
厳かにして静粛に鐘鳴りひびき夕暮れぬ
ケルンはローマに興り貿易に栄えし
船はよる古の街や秋深む
ゲルマンの大地を貫きとうとうと
古を語り静粛に古城にそいて
秋風さやかに広々とラインは流れぬ













ベネチアは海に沈みぬ

ベネチアは海に沈みぬ
待てども船は来たらじ
回想の日々のみや
栄えの日は遠く・・・・
ベネチアは海に沈みぬ
その海の底に鐘の鳴る
誰か聞く教会の鐘の鳴る
その鐘のひびきも微かに
老婆の吐息のごとく
ただ衰亡したる市
月の光りのさしこみて
栄えし市は青ざめぬ
回想の日々のみや
歓楽は去り死の都と化しぬ
幽霊都市の一つとして
忘却の淵に沈みぬ
待てども船は来たらじ
ベネチアは海に沈みぬ




 イルカのコイン

イルカが海水を切り軽快に泳ぐ
ギリシャの商船が進む
帆に風をはらみつ
地中海の島々を見つつ
方向を示す星座を見つつ
地中海沿岸のギリシャの植民都市に
ネオポリス、ニ−スは新しき都市
イルカのギリシャのコインはばらまかれる
イルカの背に乗った少年
地中海の沿岸に点々と
植民都市にギリシャのコイン
その後ロ−マのコインの時代
厳めしい皇帝の顔のコイン
ロ−マ帝国は広く刻印されぬ
遂にそのロ−マを拒みし果て
イギリスのスコットランド辺りまで
ロ−マのコインは埋もれぬ
幾代も皇帝のコインはつづく
ロ−マ兵の軍靴のひびきがヨ−ロッパ全土に
ロ−マは陸の帝国、ギリシャは海の民、自由の民
石畳の道はアルプスを越えて
アフリカの砂漠までつづく
陸の帝国は富に奢りに頽廃す
すべての陸の帝国は腐敗する
海に帝国は築けず海は昔のまま
誰にも領することなく広がる
自由の風はその大洋の上を吹きわたる
我が手にとりたしは
ギリシャのイルカのコイン
潮風と潮流にのり自由の海を泳ぐ
イルカのコインは自由のシンボル
イルカは人間とも話すとか
盛んに鳴いて船を導く
イルカの背に乗った少年
海水を切り軽快に泳ぐ
イルカは海洋国のシンボル
イルカは境界のない自由の海を泳ぐ




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