第2部−自転車で三春まで(三春にて)

三春に最初に入って行った所にこの枝垂桜があった。三春は古い枝垂桜が多い、滝桜だけではなかった。伊勢屋というところには伊勢桜というのがありどういう由来なのかわからないが伊勢屋と関係したものだろう。三春は山の間の奥まった所に家がある。坂を上ったり下りたりしなければならなかった。また道に迷いやすい、坂をこえ坂をこえて家がある不便な所である。田んぼその山間の段々の田でありあまり収穫はない感じだ。馬とか養蚕とかが産業だったらしい、豊かな国ではなかった。あいにく花曇りで雨までぽつぽつ降った。

やそうちの枝垂桜



一本の枝垂桜の御堂に古り三春の国に我は入りにき

段々の山間の田に三春の家蛙の鳴きて花曇るかな

三春なる奥に名の古る伊勢屋にそ枝垂桜や我が訪ねけり

三春なる坂上り下りまた一軒隠さる家や花曇るかな

千歳なる幽遠なりしも滝桜その幹太く乱れざるかな


花曇り昔ながらの三春の家

春の山重なり隠す三春かな

花に雨三春の城は山の中

春鳥の群れ飛び来る山の城


 桜色三春

この道あの道幾曲がり
段々の田に土筆伸び蛙鳴く
坂越え下りて誰が家や
枝垂桜また枝垂桜かな
道の辺の碑も古りあわれ
三春の国の奥深きかな
残る山の城の跡やここに
五万石の城を構えぬ
けたたましく山の鳥飛びきて
望むは三春小富士かな
三春の城下の街やあわれ
桜色に染まり暮るるや
質素なる小学校の門や
路地裏に農具を作る古き家
昔の山国の暮らし思ふかな



滝桜はやはり枝垂桜の王者だった。あれだけ風格ある桜は日本でも数えるほどしかないだろう。枝振りとかそのほか神秘的でさえあった。ただ三春には枝垂桜が多かった。あいにく花曇りで雨もよいだったが三春を知るにはあの坂を上ったり下りたりしないとわからない、山間の入り組んだ所に点々と家があった。山にさえぎられているから不便な所であった。三春五万石であったから相馬六万石と同等の力があったのか、相馬からも嫁をもらったり伊達に愛姫を嫁がせたり関係があった。今回新しくできた博物館に行かなかったのは失敗だった。それから駅も新しくなり場所が変わったり街も歩道を新しくしたりかなり変わっていた。いづれにしろ三春はあの城や街だけでなく回りを見ないとわからない、これはどこでもそうである。汽車で下りて駅の回りくらいでは街のこともわからない、その点自転車はかなり広い範囲を回れるからいいのだ。折りたたみ自転車はその点便利である。ただ汽車にのせるとき結構重いのとのせずらい点などめんどうである。今回自分の自転車は車輪を26インチの普通のにしたりしたので乗り安くなった。ただこれだと長い距離は無理な感じがする。

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