夏の部(2)−(2002)

藤の陰山家一軒隠れあり

清流のひびきに暮れぬ山の藤

 シャガの花

真昼日影にシャガの花
藤の花さわに垂れ
緑濃く山の家隠りぬ
木洩れ日さしトオスミ
しんとして影濃き森
山の上の一部落消えぬ
儚きかな人の生
その生の幽けさ
しんとして苔生す磐
千歳鎮まる岩なるべし
つつしみ隠せ
聖なるもの
触るるべからじ
その汚れしもの
我がひそか去りぬ
そは消ええるべきかな
手も触れずそのままに
その妙なる花にふるるは
光と風と神の手や
蝶一羽尋ねて飛びさり
山の道草につつまる

シャガの花は山地の陰地に日影に自生するとある。あそこに今まで咲いたのは見たことがない。シャガの花は人が植えたのしか見ていない、森であれ野であれ自生した花は一番神秘的美しいのだ。というのはまわりの環境とマッチして咲くからである。それは汚されててらないものなのだ。いづれにしろ人間は汚い、でも自然に隠されるつつまれるとその汚さも隠されるのだ。ヤマメであれイワナであれ鮎であれ清流にしかすめない、都会に住める人間自体すでに汚れに染まっていても感じないのだから美の感覚に麻痺しているとしか考えられない。