春まじかの盛岡
北上川滔々と街中流れ
松風鳴りて枯柳あわれ
盛岡の城の跡池はなお凍りぬ
中津川の朝のせせらぎひびき
上の橋、中の橋、下の橋あり
残れる雪に擬宝珠の橋古りぬ
柳も枯れてみちのくの長き冬かな
煉瓦の明治の銀行も古りぬれ
その橋の袂の一軒の古書店に入りぬ
昔をたずねて盛岡の街を我は歩めり
北上川滔々と街中流れ
岩手山の雪の嶺迫り清しき
せせらぎ流れひびく川よ
春は来たらむ街中のいくつかの
川に沿いつつ旅人そぞろ歩みぬ
小林勇一作
学生も歩み会社員も歩む
明治の銀行などの煉瓦の建物
我はみちのくの都会に来る
みちのくの都に来る
我は長く田舎に冬ごもりあれば
都会の良さをここに味わう
旅人なれば気兼ねなく
見知らぬ都会を気ままに歩む
我は今自由な都会の空気を吸う
我は今遠くから来た旅人と出会い
都会に心は解放される
都会なれども岩手山は真近かに聳え
その白雪のりんとした嶺が迫る
北方の澄んだ空気をここに吸い
啄木が不来方の城の空に吸われし15の心とは
閉塞したる渋民の村よりい出て味わいし心
我も旅人としてその自由な心を味わう
小さなる都会はまた必要なり
田舎は因循にて閉塞する
そこに解放の都会の必要
北上川も流れ中津川も流れ
雫石川も北上に注ぎ流れぬ
雪はなお残る盛岡
そこは確かに詩人の街だ
啄木や賢治のハイカラさがここにある
盛岡で都会の自由な空気を吸った
春の日我もその都会の自由な空気を吸っている