北海道夏の俳句(2000年)小林勇一
  苫小牧

苫小牧かもめにタンポポ船に来る

妙齢の婦人と語る花の影

急ぐなとマイマイ一つ旅の道

さえづりや友呼ぶ北の森広し

夕日さし遠き道のり延齢草

どこまでもこぶしの白く北の森


  支笏湖

山鳩の番い歩むや草萌ゆる

山鳩にコブシの映えて宿新し

露天風呂に宿の古しや延齢草

みな憩う国民休暇村夏の月

水仙に白樺清楚湖畔の夕

夏雲輝き写す山上湖



北の街郊外広し夕雲雀

しじみ蝶ちらつき去りて二輪草

若草に春光の名や芽吹くかな


 富良野から美瑛

夕焼けやライダ−宿の富良野かな

タンポポにポプラ二本の農家かな

下着干しライダ−ハウスに蛙鳴く

残雪の峰なお厚く農家かな

若草の窓にうるわし美瑛かな

ハエ唸るライダ−ハウスも面白し

若草の丘に雷鳴る美瑛かな

タンポポの尽きず咲く道旅十日

山鳩に若草うるわし丘の夕

かっこうの丘のかなたゆひびくかな

若草にホフラの高く美瑛かな

蕨とり写真家の棲む美瑛かな

瑠璃色の空に凍てにし樹影かな

チュ−リップに丘の緑やニュ−タウン

窓の外にボプラタンポポのレストラン


無人駅石に菖蒲の桜岡

黒岳に朝の絶壁残る雪

新緑に朝風そよぎ飛瀑かな

   
ルベシベ

石北の峠こえるや若葉風

北海道に夏の星座や若者宿

カッコウやライダ−ハウスにまた泊まる

  サロマ町

初夏の緑の丘に鐘の鳴る

新緑に芝桜映えサロマ町

ふきのとう百のすがしも北海道

ほとばしる水のひびきやふきのとう

山路来て二輪草の間にすみれかな

北の果旅路来りて燕来る

  オホ−ツク

ホ−ツク雨ぬれあわれ遅桜

  枝幸

牛のいてオホ−ツク望み遅桜

カッコウや町一つまたあとにする

次の宿目指して走る夕郭公

燕飛ぶ走り続けて北の果

客一人旅館の古りて君子蘭

タンポポに灯台一つ北の果

   礼文島

波荒く風強くして花しのぶ

連れ添いて初老の夫婦花しのぶ

風さやかミヤマオダマキ丘の上

木の伸びず礼文の丘に花しのぶ

 サロベツ原野

郭公や客が来たよと宿一軒

夏の月写し原野に沼いくつ

風吹かれ原野の遠くに夏の蝶

郭公や原野の広く遠山嶺

夕郭公旅人集う北の宿

徒歩宿の屋根裏窓に夏の星
 
夏の夕牧場の緑に牛乳鍋

札幌

開拓の大地広がり夏の雲

夏の夕牧場の緑に牛乳鍋

開拓の大地広がり夏の雲

三本の樹影の濃しや植物園

朝日さしオオハナウドの伸びにけり

黄菖蒲親子の鴨の水の上

吹き抜ける風の涼しき大通り

郊外の家々広し夏の菊


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