萩は塀の街だった。日本の建築は木であり木は殘りにくいが塀は残るという。塀は土だから残るのか万里の長城なども残っている。日本でも土蔵などは残っている。ヨ−ロッパでは石だから残っている。大陸では強固な建築が発達したのは当然である。橋でも庭でも壁でもヨ−ロッパではすべて建築の一部であり都市自体が強固な建築物として作られたのである。建築なくしてヨ−ロッパの歴史はないごとく建築とともに歴史が作られてきたのだ。日本は木の文化だからそうした建築の文化は残らなかったのである。萩は塀が残っていることで当時の面影を残している。塀に囲まれていることで静かで落ち着いた雰囲気を保っている。この塀ぞい歩いているとなんとも心落ち着く、心が癒されるものを感じた。やはり昔が残っている所はいいと思った。近代的なビルの谷間で人は日々心を消耗されている現代、この塀の空間は昔にタイムスリップした感じて良かった。
秋の朝一杯のコーヒー塀の内
秋の朝萩焼いくつか手にとりぬ
朝静か石橋渡り菊の花
塀静か菊雨にぬれ萩の町
塀古り屋敷も古り秋の薔薇
朽ちつつも残れる塀や萩の秋
竹直ぐに長き塀沿い萩の秋
秋の朝塀長々と萩の町雨しととぬれ旅人歩みぬ
秋の薔薇誰か見るらむ塀の内旅人しばし歩み過ぎにき
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    萩の秋の夕べ
白壁の塀の長々とつづきてあわれ秋の夕
おみなおとこの行く影の映りし壁かな
朽ちつつも古き土塀の残りて昔の面影
長々と白壁の塀のつづきて心静まりぬかも
塀の内淋しらに秋の薔薇の赤き色かな
武家屋敷ここに質実なる日々は送られて
維新の大業のこの城下より起こると
今はただ長々と塀のみなりしや
ただ懐古の日のここに殘りて偲ぶ
萩焼を飾る土蔵の細道や商家の古りぬ
萩の町もの寂びて残る城跡もあわれのまして
枯芒に波の音ひびき粛条と暮れにしや
旅人一人跡を尋ねて壁にそいつつ歩むかな
街より離る昔の萩駅に汽車待つも
何か遠き昔の人を待つごとしかも
 塀の町(その二)
街の中に古い塀の壁が
朽ちつつもしっかりと残っている
雨風に打たれつも残っている
その壁に長い歳月が感じられる
何でも新しくすることは良くない
古いものが殘り昔日を偲ぶ
老人もまた社会の一部である
古いものも新しいものも必要である
古い木があり柿のなる塀の内
昔日の佇まいがここに残っている
古い塀に沿い深まる秋にそぞろ歩めば
静かなる昔に帰るごとしも
秋の日は塀にさして萩の城下は暮れぬ