阿武隈から茨城−イワキ−浜通り


(川俣)


峠にて水鏡神社の木下闇

夏の朝峠越え行くサイクル車

峠越ゆかなた吾妻嶺夏の朝

 (杉沢の大杉)

大杉に若衆集い夏の雲

大杉に芙蓉木槿の里古りぬ

塩庭にいつバス来るや日影かな

暑き日や峠を越えて清水飲


  (大越)


夕焼けや旅人泊まる鬼の里  

稲光り星に放ちて鬼の里
                                      
ひびき来る雷の近きや鬼の里

旅人の去るや轟く雷ととも
                  
ひぐらしや旅人着きぬ古殿に


(鮫川村戸草)

戸草にて蛍一つの余韻かな

虫の音や戸草に一夜旅の人

虫の音や戸草にあわれ家数軒

夏草やテントをたたみ戸草去る

一軒の万屋残り木槿かな

訪ね入る夏の奥山一部落

  (棚倉)

月見草に埋もれて奥の山の家

涼しさや川を庭にし山家かな

棚倉や樹齢五百年の木下闇

矢祭に西行の歌や鮎上る


旅人に道は別れぬ晩夏かな

夏の日や墓とも別れ旅路行く

ひぐらしや明日また越えむ峠かな

   (茨城)

茨城の山々越えて晩夏かな

久慈川の流れにそいて晩夏かな

   (袋田)

涼しさや轟き絶えぬ飛瀑かな

雷や太平洋にい出にけり


  (二つ島)

暑き日や夕波ひびく二つ島

二つ島旅人去るや晩夏かな

 (イワキ−浜通り)

撫子や磐城の浜の朝明けぬ

巡り来ぬ磐城の港夏の夕

小名浜に鰹一本朝の市

熱帯魚黒潮にのり波立に

朝つばめテントをたたみ旅たちぬ

波の音のテントにひびき明日はたつ

テント張り明日も旅路や夏の星

六号線ハマヒルガオや朝走る

潮風や夏の旅路の六号線

太平洋に向かいて咲けるひまわりや

風となり夏のライダ−すれ違う

高瀬川の日陰の広し川烏