秋の松江にて
松江は城下町として雰囲気があった。城も昔のままに残っていた。武家屋敷も城をすぐ前にしてあった。武家屋敷は城と一体化してあったのだ。昔は職住一体である。江戸時代がなかなか理解しにくいのは社会構造の違いが理解できなくなったからである。武士は武士として住む場所も生活も一体であった。庶民とは話す言葉まで違っていたのだ。公家言葉があるように武士言葉もあった。子供の時から侍は侍同士でしかつきあわなかった。だから連帯感は強かった。一つの強固な共同体が武士を作っていたのである。城を目の前にして城とともに生活そのものが一体化していたのだ。会津の白虎隊は城が燃えたと思い切腹したのはまさに城と生活が一体化していた証拠である。あのようになったことは当時の社会構造からしたら異常なことでもない、むしろ当然のことだった。現代のように学校で無理やり教育されるのではない、日頃の生活自体が教育だったのである。それが教育であり無理やりして道徳など身につくものではない、生活のなかで自ずと身につくものなのだ。武士道もまたそういう生活のなかで幼少より身についたのである。今の社会構造との違いを理解することなくては昔は理解できないのだ。例えば町人も大工町とあったら大工だけが住んでいた町であり他の職業の人とは交わらない、大工は大工仲間と一緒に暮らしていたしそのなかで結婚相手も見つけたのかもしれない。田舎は田舎で小さな村中心に生活して余り他と交わる生活をしていなかった。こういう社会では精神的には安定する。伝統的生活が連綿と受け継がれるので安定する。老人もその覚えた技を伝える役目があるので重宝されるのだ。
武家屋敷軒を並べて秋日和
こうした景観が安定感を作り出していたのだ。
米子町とは城を作るために米子から大工を集めた所でそこにそのまま住みついたので米子町となった。
それから京橋には殿町と町人町があり堀を境に別々に住んでいたがそれをつなぐ橋があった。京橋には京店があり京店は京のものを見せる場所だった。
ともかく江戸時代は侍と武士はまるで別な人間の感覚で棲み分けが行われていたのだ。城でもうひとつ思うのは日本の城は木造であり防御には適していたとは思えない、火を放てばすぐ焼失するのだ。城はむしろ防禦のためより象徴的なものだった。城が燃えた時天守閣で殿様が切腹するように一つの儀式として切腹があった。殿様が天守閣で切腹して戦いは終わるのだ。そういう武士の作法のためにあったのだ。ヨーロッパの城は物凄いいかついもので市自体も壁をめぐらし石作りの要塞であり城は防禦するものとして堅固に作られていた。それは防禦そのもののためである。ヨーロッパにはそうした建物から技術にしても防衛の思想が歴史的に身についているのである。日本の城は象徴的なものであり人は石垣、人は城、というごとく城に重点を置いていないのだ。面白いのは江戸では火事が頻発したが町人は別に困らなかったという、町人は長屋住いであり家財道具も少なく燃えても失うものがほとんどなかったからだという。かえって火事があった方が普請が増え経済が活性化して良かったとまで言う人がいた。確かに失うものがないことはそうなる。現代は余りに多くのものを持ち失うものが多いから不安にもなるのだ。江戸時代が理解しにくいのは社会構造が余りに変わりすぎたためなのだ。ナチスとかファシズムが現代の社会構造と密接に結びついて起こる。中世とか封建時代には起こり得ないことだからだ。現代の凄まじい混乱の世界をまとめるのはファッシズムしかなかったともいえる。民主主義とファッシズムは紙一重なのだ。現代社会そうして社会構造故にわかっていても避けられない宿命にあるといえる。交通事故が避けられないと同じである。松江は15万人というからこういう街は歴史も残り調和がある。精神的にも安定するのだ。
今日の泊まりは京橋近くのyoung inn である。3000円は安い。部屋は広く十分である。風呂とかトイレは外でもかまわない、3000円だと長旅では楽になる。宿泊費が大きいからだ。外で食事しようとしたら活魚料理とか手軽に入る所がないのでコンビニでビールと弁当だ、これも安上がりである。料理店は酒つきで2000円はなくなる。長旅ではやはりなんでも安くする必要があるのだ。結構外人が旅していた。年配の婦人の二人連れが多かった。しかし困っていた。なかなか英語は通じない、自分も外国では難儀したので教えてやったりしたがガイドがいないとむずかしい面がある。外国旅行は本当はその国の文化をしることだから案内役、言葉のわかる案内役が必要なのだ。その場で説明されると納得いくからだ。むずかしい英語でなくても意外と説明はできる。日本人はとにかくすでに知っている、言葉も中学生くらいの英語で通じる場合があるのだ。要点だけでも通じるのである。金沢とか松江は地方の古都としていい、たた事前に調べておく必要はある。
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通信でトラブルがあった、通じなくなったのだが原因は部屋が無線を通さないほど密閉状態にあったのだ。部屋の外の廊下では通じたのだ。無線も通じない部屋がある、隙間のない部屋なのだ
この部屋は密閉されているから火事になったりしたら危険だ。無線も通じないことは完全な密閉状態である
秋の山囲みて静か松江城
秋日さし楠木の古りぬ松江城
秋の朝城を前にして野点かな
城を前に武家屋敷かな秋の朝
白菊やゆかしき人棲む旧居かな
ゆかしさや白菊さして旧居かな
屋根に散る木の葉や静か茶室かな
堀沿いに石蕗咲きて舟めぐる
柿なりて昔を残す松江かな
堀めぐる舟に松江の秋日和
小さなる橋のいくつか虫の声
松江なる石橋町や秋の風
松江なる京橋古りて秋の暮
柿なりて席主の待てる茶室かな
待合や竹と木立に木の葉散る